何か…足りない。
説明できない…足りない。

漠然とそんな思いを抱きながら、仰向けに星を見ていた。
誰も居ない寮の庭で、俺は大の字になって星を眺める。

できるだけ空から遠い場所から、星を見たかったのかもしれない。
俺がこの寮で過ごした日々…その本当の始まりは屋上だった気がするから。

学園祭の中で、この寮に馴染めないと悩んでいたあの時期。
俺は屋上で皆と仲良くなろうと…頑張ったんだっけ。

今は地面に背をつけている。

終わりというわけじゃない。ただ…始まりに帰ることが怖いだけかもな。

でも、こうして空を見ていても…あの時に眺めた星は変わらずにそこにあった。
屋上だろうと…地面からだろうと…物の価値が全く変化しないことを誇示するように。

「寒い…」

心に穴が開いた。隙間風。
傷があるわけでもないのに、痛いと感じている。

「俺は…何をすれば良いんだろう」

こんな夜は久しぶりだと思いながらも、星から目を離せない。

手を伸ばしてみた。掴めない。当たり前だ。だって星だ。
何を求めて良いのか理解できていない今の俺には、掴めるはずもない。

随分と…この学園に来てから時間がたったような気がする。
色々な人と出会った。怖い思いも…辛い思いもした。
暖かい思いもあった…

なぜか…全部過去形。どうして？

「このまま…寝よう。今日は疲れているんだ」

まるで言い訳のように思考を落とす。
瞼と同時に心も暗闇に染めてゆく…静かに、重く。

もう、何も考えたくなかった…